【書評】世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」〜を読んで思ったこと-クリエイティヴであるために

今回ご紹介するのは、山口周(著)『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」』です。

ビジネス書大賞2018準大賞受賞。大学で美術を専攻し、現在、コンサルティング企業にてイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成分野で活躍する著者が、ビジネスにおける「直感」と「感性」に裏打ちされた「美意識」の重要性について説きます。

「美意識とビジネスっていったいどんな関連性があるの?」

…と思った方も多くいるでしょう。

いったいどのような繋がりがあるのか。詳しくみていきましょう!

\こんな人に読んで欲しい/

  • ビジネスにおいてなぜ「美意識」が重要なの?
  • 今の時代、クリエイティビティは重要だと思う
  • ノウハウ系のビジネス書は飽きた

本著の内容

アメリカやイギリスの大型美術館で行われている社会人向けのギャラリートークプログラムでは、近年参加者の顔ぶれが変わってきているそうです。

*ギャラリートーク:キュレーターがギャラリーと一緒にアートを鑑賞しながら、作品について解説するという教育プログラム。

以前は旅行者や学生の参加者がほとんどでしたが、ここ数年、スーツを着たビジネスパーソンをよく見かけるようになったといいます。

忙しいはずのビジネスパーソンが、わざわざ早朝の貴重な時間を割いてアートの勉強をしている。

いったいなぜなのか?

本著ではその答えを詳細に説いています。

この本は7部構成で「美意識」の重要性について説いているわけですが、本編が始まる前に「忙しい読者のために」という章が用意されており、そこにおいて、なぜ「美意識」を鍛えるのか?という問いに対する3つの回答が述べられています。

本著の中核をなす「答え」をあっさり言ってしまっているわけですが、この 大胆さと読者に対する思いやりから信用性のある内容であるだろうと期待が高まり、さらに読み進めていきました。

忙しいであろうビジネスパーソン向けに書いてあるということもあり、「忙しい読者のために」という項目は、本の趣旨とも整合性が取れていますね!さすがです!

それでは、3つの回答について見ていきましょう!

3つの回答

3つの回答として著者は下記の説明をしています。

  1. 論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある
  2. 世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある
  3. システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している

ここでは各項目の標題の紹介にとどめますが、これに対して思ったことを 僕自身のエピソードを絡めながら綴っていこうと思います。

それではそれぞれの項目について見ていきましょう。

論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある

論理的・理性的な情報処理スキルの限界とはいったいどういうことなのか?

これを一言で表現すると、このようなスキルを皆が同様に身につけることによって、全員が同じ正解を導き出す、すると、他人との差別化が難しくなるということです。

また、著者は今日の世界を「VUCA」(=「不安定」「不確実」「複雑」「曖昧」の英語の頭文字をとって作られた造語)という言葉で表現しておりますが、このような社会において、合理的な問題解決アプローチは機能しないと説いています。

ではどうすればいいのか?

それが 「真・善・美」を根底に持つ「美意識」です。

詳しい内容が気になる方は本編をご覧ください。

ここまでの内容を読んで、私の仕事における共通点を見つけたのでご紹介いたします。

僕は化粧品の研究開発者として、日々、ものづくりに携わっていますが、上記にあるような「通り一遍のアプローチ」では新しい良いものは作れないと感じています。

それはなぜか?

それは多くの他の開発者と同様の思考プロセスでは、同じようなものしか作ることができず、差別化が難しいという理由です。

例えば、ある課題に対してこの原料を使えば大丈夫というパターンが形成されていた場合、それによって課題が解決されたとしても結局同じような機能で同じような感触のものしか作れません。

これは致命的です。

なぜかというと、流行が激しく変化する化粧品業界は、常に画期的で機能性が高いものが求められる世界です。

このような市場において他社製品と変わらない、単なる模倣品のようなものは自然に淘汰されるからです。

論理的・理性的な問題解決アプローチを用いたところで、動的に変化するこの世の中に追いつき、受けれられるものは作ることはかなり厳しいのです。

ではどうしたらいいのか?

ここで活躍するのが自身の 「感覚」と「直感」です。

現在の日本企業で「直感を信じて自分の感覚でやりました」という発言は許されない風潮がありますが、これは大きな過ちだと思います。

「直感」とは今までの経験で言葉では説明できないけれど重要だと思われることを基準に判断することです。

また「感覚」とは感じることで知覚されるセンスのようなものだと私は考えております。

つまり「直感」や「感覚」は、各個人固有のものでありこれを最大限に発揮することで、オリジナリティー溢れるものづくりができるということです。

現代において、「クリエイティビティ(=創造性)」の重要性が取り上げられるようになっておりますが、「VUCA」を生き抜くために、これはほんとうに大切なことだと思います。

「ほんとうに大切なことは目に見えない」と、かの有名な星の王子さまも述べていますが、その通りだと思います。

ちなみに、星の王子さまについての記事はこちら。

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上記の内容は僕自身の個人的意見ですが、「クリエイティビティ」というキーワードは2つ目の回答に深く関わっていきます。

世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある

本著の一節で下記の言葉が紹介されています。

世界中に広まった豊かさは、全人口のほんの一握りの人たちのものであった『自己実現の追求』を、ほとんどの全ての人に広げることを可能にした
-ロバート・ウィリアム・フォーゲル

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」〜より引用

ここで言うところの「自己実現の追求」とはどういうことでしょうか?

つまるところ、世界に豊かさが広がることで、「好きなことをして過ごす時間」や「なりたい自分になるための活動をする機会」が皆に等しく与えられるようになったということではないでしょうか?

好きなことで生きていく」というワードが取り上げられるようになった昨今では、YouTubeやインスタグラムの台頭によって生まれたインフルエンサーの存在が代表例ですが、「 自分の興味のあることを突き詰めること」で仕事を生み出し、生計を立てることが可能になってきました。

このように今後このような流れは一気に加速して生き、最終的には各個人が複数の肩書きを持ち、自由に仕事を生み出し活躍する時代が来ると予想されます。

日本でも、名だたる企業が副業を解禁したニュースはこの流れの象徴ともいえる出来事でした。

これは、この時代を生き抜くためには、「好きなこと」を持つことが必須であるともいえるでしょう。

僕自身、化粧品の開発者であることは先ほど述べさせていただきましたが、新しい時代の流れに乗り、化粧品とは別に好きなことをとことん突き詰める活動の準備をしています。

僕自身の目標に関する記事はこちら。

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システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している

これは標題の通りになりますが、ITの発展による社会変化の加速によって、法律の整備が追いつかないという状況が発生しているそうです。

このような社会でいわゆるグレーゾーンに当たる問題にぶつかったとき、判断の拠り所とすべきは、法律ではなく、自身の倫理観だというのが僕の解釈になります。

本文の一説では下記のように説明されています。

そのような世界において、クオリティの高い意思決定を継続的にするためには、明文化されたルールや法律だけを拠り所にするのではなく、内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められる

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ より引用

僕自身の仕事に照らし合わせると「特許」というキーワードが浮かび上がります。

特許に関しては下記の言葉を引用します。

特許法では、「この法律は、発明の保護および利用を図ることにより、発明を奨励し、 もって産業の発展に寄与することを目的とする」としています。

「特許の目的とは?」より引用

このように特許とは、「発明の独自性」を守るとともにその発明を参考にあらたな価値を生み出し(模倣とは異なる)産業の発展に繋げましょう、ということになります。

ところが特許で定められた範囲から着想を得て新たなものを作るのと、単に模倣してしまうことの境界線は実際グレーであると思います。これは特にデザインの分野で顕著であると思います。

「お餅の切れ目」が特許侵害になり15億の損害賠償になった事例は有名ですが、これも個人の「審美性」に関わる問題であると思います。

つまり善悪の判断基準を己の倫理観と照らし合わせて行動することが重要であるということだと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

先ほどご紹介した「美意識」を鍛えるべき3つの理由に関して、後述の7つの章で具体例を交えながら掘り下げられています。7つの章の標題に関しては下記の通りです。

  1. 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
  2. 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
  3. システムの変化が早すぎる世界
  4. 脳科学と美意識
  5. 受験エリートと美意識
  6. 美のモノサシ
  7. どう「美意識」を鍛えるか?

ここまで読んでみて、ではどのように「美意識」を鍛えればいいのか?と思われた読者の皆さんに朗報です。

本編の第7章では、どのように美意識を鍛えたらいいのか、その方法についても説明されていました。

やはり読者に対する思いやりが溢れる書だと感じられますよね!

この章も大変興味深く、今すぐにでも実践できそうな方法が紹介されていましたので気になる方はぜひお手にとってみてください。

以上、最近読んだおすすめ書籍のご紹介でした。

今後もこのような書評記事を書いていこうと思っています。

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