エールフランス社のCO2排出量削減・相殺目標-環境問題(気候変動・温暖化)に対する解決策

近年、航空業界では、温室効果ガスや気候変動への影響が取り上げられ、各社の社会的責任が問いただされています。このような課題に果敢に挑戦しリーダーシップを持って取り組んでいる企業の一つがエールフランス社です。今回は、エールフランス社の環境問題に対する取り組みについてご紹介します。

CO2排出量削減のためのエールフランス社に対するフランス政府の要求

つい最近、航空業界のCO2排出量削減のためのフランス政府の取り決めが話題となってます。

その内容は、新型コロナの影響で打撃を受けたエールフランス社への公的資金注入の条件として、フランスの高速列車TGV(Train à Grande Vitesse)との競合便の廃止を要求したというものです。この競合便とはTGVで2時間30分以内の移動時間で運行する便のことで、パリからボルドー、ナント、リヨン、レンヌ行きの便が該当します。

フランス政府は環境問題対策としてCO2排出量削減のため環境税(炭素価格)の設定を進めていましたが、今回の取り決めもこれと同様の目的によるものだと考えられます。

参照元の記事→Air France ordered to curb competition with rail in France

環境問題に対するエールフランス社のサステナブルな取り組み

エールフランス社のアンヌ・リゲル(Anne Rigail)代表取締役社長が2019年9月30日のインタビューで次のような計画を発表しました。それは、2020年1月1日以降、同社国内便(定期路線500便)で排出されるCO2排出量を全て相殺し実質ゼロとするというものでした。

また、同社は既に欧州連合域内排出量取引制度(Le système communautaire d’échange de quotas d’émission/SCEQE)や国際路線炭素排出量削減および相殺制度(Le Régime de compensation et de réduction de carbone pour l’aviation internationale/CORSIA)の下でCO2排出量を相殺する取り組みを行っているとのこと。

現に2011年からの取り組みによって、2011-2018年でCO2を20%削減することに成功しています。また、アンヌ・リゲル社長はこれらの取り組みは同社が自発的に行なっていることだと述べています。

では、具体的にどのような施策がなされているのか?

それではエールフランス社の取り組みについて順を追って見ていきましょう。

エールフランス社が掲げる目標は大きく分けて下記の3つです。

  1. CO2 排出量の削減・相殺
  2. 環境に配慮した機内体験
  3. 革新的ソリューションの開発

CO2 排出量の削減・相殺

まず掲げているのがCO2排出量を2030年(2005年比)までに50%削減するという目標です。

これは、乗客1人に対する1kmあたりのCO2排出量で計算し、100kmあたりの燃料消費量を3リットル未満に抑えるというものです。

では、具体的な方法はどのようなものでしょう?

下記の3つの方法が挙げられています。

  1. 燃費を最大25%削減する次世代型航空機の導入
  2. 機体重量の軽減(軽量素材やアクセサリー、デジタルプレス)
  3. エコフライトの促進、フライトプランの最適化 

先ほどのTGVとの競合便廃止は、3つ目のフライトプランの最適化に繋がるものだと考えられます。

次に掲げられているのは、フランス国内線のCO2排出量を100%相殺するという目標です。

同社はEcoactと連携し森林再生、生物多様性の保全、エネルギー移管プロジェクトを進めることで、温室効果ガスの排出を相殺するCO2の回収プロジェクトに貢献しているとしています。

その具体的な内容が次の9つのプロジェクトです。

  1. 森林保全プロジェクト(ブラジル・マラジョ島)
  2. 森林破壊防止プロジェクト(ブラジル・ボルテル森林)
  3. 生物多様性プロジェクト(カンボジア・カルダモン森林)
  4. 熱帯林と絶滅危惧種の保護(ペルー・アマゾン)
  5. 植林、農村開発プロジェクト (ケニア・キタル)
  6. 森林保全・経済開発プロジェクト(ケニア)
  7. 風力プロジェクト(インド・ガンジー)
  8. 植林プロジェクト(フランス・ジロンド県)
  9. マングローブ植林事業を実施するための研究開発プログラム(フランスの海外県・海外領土)

このようにエールフランス社は、世界各地7つのプロジェクトのサポートを実施し、フランス2つのプロジェクトの立ち上げを計画しているとのこと。

3つ目の具体策として、「トリップ&ツリー」オプションを導入しています。

これは、乗客による任意の寄付システムで、フランス国内および世界各地の森林再生や人材開発プロジェクトに寄付してもらうというものです。ちなみに、この参加者は寄付金額に応じて税控除を受けられるというメリットがあります。また、選択したプロジェクトの進捗状況をたどることができるそうです。

環境に配慮した機内体験

エールフランス社は環境問題に対しても直接的な解決策を講じています。

具体的には下記の3つが挙げられます。

  1. 使い捨てプラスチックの削減
  2. 廃棄物の削減とリサイクル
  3. 食品ロスの削減

使い捨てプラスチックの削減

これは、1 億 2 千万点もの使い捨てプラスチック(カップ、プレート、カトラリーなど)をバイオベースの代替品へと切り替えていくという試みです。バイオベースの代替品とは、紙製コップや木製のマドラーなど。他にもプラスチックストローの廃止や食器を使わない「ボナペティ」バッグサービスに取り組んでいます。これにより1300トンのプラスチック削減につながるとのこと。

実際に2019年6月5日の世界感謝デーでは、エールフランス航空のパリ発デトロイト行きAF378便において、使い捨てプラスチック製品の代わりにバイオ素材の製品を乗客に提供したそうです。

廃棄物の削減とリサイクル

パリ行きのフライトにおいて、プラスチックボトル、 テトラパック紙のパッケージ、アルミニウム缶、ガラス、新聞、雑誌などの廃棄物が分別され、リサイクルされています。これにより機内に持ち込まれる700万本のプラスチックボトル、300万の紙容器の包装、600万の缶が年間でリサイクルされるとのこと。

これは特例で許可された限定的な制度で、通常、衛生規制により、サービス業者は、国際線到着時に廃棄物の回収、埋め立てまたは焼却が義務付けられています。 つまり、エールフランス社のパリ行きの便でのみ分別したゴミのリサイクルが許可されたということです。

食品ロスの削減

その他にも、食品ロスの削減のために新しいオンラインで食事の要望を受け付けるサービスを導入。フライトスケジュールによって異なる食事のタイミングを調節し、無駄になる食品を削減しようという目的があります。

革新的ソリューションの開発

最後に、革新的ソリューションとして一部のフライト便でバイオ燃料の導入を計画しています。現に、2020年6月1 日より、サンフランシスコ国際空港発のエールフランス便(1000便以上)において、従来の燃料とバイオ燃料を組み合わせて使用する予定です。これにより、6700 トン以上の CO2の排出を防止できる見込みだそうです。ちなみに、このバイオ燃料とは、使用済みの回収した食用油や動物油から製造されているとのことです。

環境問題(気候変動・温暖化)をめぐる世の中の動向

このようにエールフランス社は環境問題解決に向けて積極的に動き出しています。これには環境問題を取り巻く世の中の動きが背景にあります。

近年、温暖化や気候変動問題が社会問題として取り上げられていますが、温室効果ガス排出量のおよそ2%は航空産業いよるものであると航空輸送アクショングループ(ATAG)が発表しました。

そして、世の中では「航空機離れ:の流れが広がりつつあります。ヨーロッパでは「flygskam(フライグスカム)」(飛ぶのは恥だ)という造語が流行し、国内の移動において航空機の利用を自粛したり、これを訴える若者によるデモが起こったりしているそうです。

航空業界だけでなく航空機を利用する企業の社会的責任も問われ始めています。自社の評価を下げるリスクのあるこの流れを受けて様々な企業がSDGs(持続可能な開発目標)に向けて取り組み始めています。

持続可能な航空業界への転換に向けて

今回は、フランス政府のCO2排出量削減のためのエールフランス社への要求というトピックを切り口に、同社の環境問題におけるソリューションを取り上げました。SDGsが掲げられた昨今において、気候変動や地球温暖化は重要な社会問題として認識されています。先行きの見えない現状況において企業が積極的に指針を示し、舵を取っていくことの果たす役割は大きいはずです。果たしてこの取り組みがうまく機能し持続可能な航空業界への転換となるのか?今後の動向に期待が寄せられます。


\あわせて読みたい/


参考文献:閲覧日(2020年5月10日)

最新情報をチェックしよう!