フランス語圏のマンガ「バンド・デシネ」とは?その特徴と日本のマンガとの違い

今回はフランスの漫画「バンド・デシネ」について紹介したい。日本のマンガとの違いはあるのだろうか。バンド・デシネとマンガそれぞれの特徴を比較しながらその違いについて考えていく。

バンド・デシネとは

今や日本のマンガは世界的に有名で « manga » という言葉が通じるほど世界中の人々に知られている。毎年フランスで開催される日本文化・サブカルチャーの祭典「ジャパン・エキスポ」でも取り上げられるように、日本のマンガはフランスでも人気を博している。

ところで、フランスにも自国の伝統ある「マンガ」なるものがある。それが「バンド・デシネ」である。バンド・デシネとはフランスやベルギーを中心としたフランス語圏のマンガのことで « bande dessinée » もしくは単に B・D(ベーデー)と綴る。その意味は「描かれた帯」つまり「続き漫画」のことを指す。

フランスでは建築や映画などに続く第9の芸術と称されるほど、その視覚芸術として豊かな表現をもつ点が評価されアートとして認知されている。これは、日本のマンガを考える際に新たな視点を与えてくれるかもしれない。1)

フランスのバンド・デシネと日本のマンガとの違い

フランスのバンド・デシネは日本のマンガとどう違うのだろうか。大きく以下の3つの違いがある。

  • サイズ
  • 仕様
  • 制作過程

サイズ

見た目でわかる違いはサイズである。日本の漫画は基本的に、新書版あるいはB6のものが多い。それに対し、バンド・デシネはA4かそれよりもやや大きいサイズが一般的である。アルバムと呼ばれる単行本で出版され、装丁はハードカバーである。

ただ例外的にたとえばジュニーの「ピンク・ダイアリー」のように日本アニメ・マンガの影響を受けた作品もあり、これは単行本サイズで全ページ白黒というマンガ形式で出版されている。2) このように、生まれたときからマンガが身近に存在し、それに親しんできたため日本マンガの作風に影響を受けたBD作家が登場してきているのも近年みられる傾向の一つである。

仕様

次に異なる点は仕様である。バンド・デシネのページ数は48~64ページ程度である。バンド・デシネはハードカバーでオールカラーのものが一般的である。この48ページ、オールカラー、ハードカバーのバンド・デシネを「48CC」と表される。それに対して、日本のマンガはソフトカバーでモノクロなのが多い。

色も作品の中でメッセージを伝える重要な要素となっており背景なども細部まできっちり描かれることが多い。1コマ1コマでデッサンの完成度が高く、時間をかけて鑑賞する絵画のようなイメージが強い。3) やはりここにもバンド・デシネの芸術性が色濃く現れている。

制作過程

3つ目の違いは、制作過程である。例えば、日本のマンガは毎週本誌で掲載、単行本は数ヶ月に1冊というように納期が短く刊行ペースが早い。それに対し、フランスのバンド・デシネの刊行ペースはマンガ週刊誌3週間分に満たないページ数を1年かけて出すこともある。1年に1冊のアルバムが出版されるのが平均的であり、これはむしろ順調な方である。

そして、フランスにはマンガ雑誌が現在時点で存在しないということもあり、バンド・デシネは最初から単行本つまり書き下ろしで出版される。バンド・デシネは芸術作品という面が強いため、時間をかけてじっくり制作していく傾向がある。

またバンド・デシネはシナリオを書く原作者と、絵を描く作画者に分かれて制作されることが一般的である。さらには色をつけるカラリスト、書き文字の担当者がいることもある。4)一人の作家が別の作品では 作画を担当することも珍しくはなく、多数のアーティストがコレボレーションすることで作品を完成させるというイメージの方が正しいといえる。

以上のように、制作過程や刊行ペースの違いは流通体制によるところが大きい。

バンド・デシネの変遷

バンド・デシネの扱うジャンルは様々である。例えば、アクション、SF、ヒーロもの、ファンタジー、歴史もの、エッセイ、ルポルタージュ、文学原作、子供向けなど多岐に渡る。

60年代はフランスでBDが盛んに生み出された黄金期であり、それまで子供の読み物であったBDが大人向けの作品を提供する時代でもあった。5) その後も新しい表現が探求され、政治や性を皮肉的に扱った月刊誌等も登場している。

90年代にはこれらの雑誌はほぼ廃刊となり、この時期をBD暗黒期とすると、90年代からは新たな潮流が生まれ業界に活気が戻ってきた。その潮流の一つが、日本マンガの翻訳出版が大量になされたことにより、その影響を受けたBD作品が誕生してきたことである。豊かなバンド・デシネ文化はこのように大きな変遷を経て発展してきたのである。

おわりに

フランス語圏のバンド・デシネの特徴について日本のマンガと比較しながらまとめた。それぞれの特徴の違いは認知のされ方や流通体制の違いによるところが大きい。ただしバンド・デシネとマンガはそれぞれ独立しているのではなく、相互に影響を与え合い発展するという新たな潮流がみられる。バンド・デシネとマンガをめぐる今後の動向に注目したい。

参考文献
[1] 三浦信孝、西山教行編 『現代フランス社会を知るための62章』 2010年、94頁。
[2] 同上、98頁。
[3] 同上、95頁。
[4] 同上、95頁。
[5] 同上、97-98頁。


バンド・デシネを知るための文献・情報ガイド

「現代フランス社会を知るための62章」はフランス社会について62のテーマを詳しく解説している書籍である。社会、教育・文化・スポーツ、経済・産業、法・法律、政治と外交の5章に分かれおり、幅広い事象について理解を深めることができる。当記事もこちらを参考に書かれている。より詳しい内容について知りたい方はこちらを参照されたい。

こちらはバンド・デシネに関するガイドブックである。徹底ガイドというタイトル通り、網羅的に解説がなされているため、バンド・デシネについて全体を俯瞰的に眺めることができる。最初の一冊として入門書をお探しの方はこちらを参照されたい。

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