フランスの新興郊外都市、ラ・デファンス:パリの歴史軸に背を向けて

まもなく到着。窓からみた景色に驚いた。そこにはパリの郊外、いや、フランスのイメージとは似ても似つかない都会的風景が広がっていたからだ。

フランスの新興郊外都市 ラ・デファンス

パリに留学していた頃、友達の誘いでラ・デファンスという地区に遊びに行ったことがある。ラ・デファンスとはパリの西の果てに位置し、オフィスビルやデパートなどガラス張りの高層建築の建設が唯一許可された新興郊外都市である(景観保護や伝統的建築物保護の観点から、パリ市内の建物の高さには厳しい制限があり一定以上の高さを超える建物は建設できない)。

市内の統一感のある街並みとは異なり、東京都内のオフィス街を彷彿させるような景色がそこにある。現代風の装いをした新凱旋門があるのも面白い。そう、そこはパリ市内とは対極をなす場所なのだ。

ラ・デファンスの歴史

ラ・デファンスにまつわる話は興味深い。第二次世界大戦後、経済成長に伴うオフィス需要の増大を受けて、この地区の再開発が計画された。1958年からフランス政府は計画に着手しているという。

実はラ・デファンスはパリの中心から一本道でつながっている。パリの中心地、つまり、ルーヴル美術館(カルーセル広場)から真っすぐ西へ、コンコルド広場のオベリスク塔、そしてシャンゼリゼ大通りに沿ってシャルル・ド・ゴール広場の凱旋門、さらにどんどん延びて、ブローニュの森を脇に見てヌイイ橋を渡って(ここでセーヌ河を越える)、パリ郊外のラ・デファンスという都市へつながる一直線の道がある。これを「パリの歴史軸」とか、凱旋門があるので「凱旋軸」とかいったりする1)。

「パリの歴史軸」を背を向けて

僕が住んでいた街はパリのイッシー・レ・ムリノーという地域でパリから見て南西に位置していたため、ラ・デファンスまではペリフェリック(パリと郊外を結ぶ外周高速道路)沿いに迂回するRERの路線に乗ればすぐに行くことができた。

ラ・デファンスに遊びに行くというと違和感がある。周りはほとんどオフィスビルだからだ。ひとまず目についたデパート(東京で例えるなら、ららぽーとのようなイメージ)に入った。デパートの中は食品店や洋服屋、レストラン、映画館などがあった。僕らはフードコートで食事を済ませ、中のスターバックスでコーヒーを飲んだ。

途中から僕は、フランスに来てまで日本でもできることをして、一体なにをしているのだろうという気分になった。ラ・デファンスは確かにパリには珍しいが、日本から来た僕からしたら、いつも通りの風景だ。ラ・デファンスはパリの中心地から眺め、伝統と近代化のコントラストを愉しむくらいで丁度良いのかもしれない。

留学中は歴史や文化に対する興味も薄かった気がする。帰る時間となり「パリの歴史軸」を背に帰路についた。あたりはすっかり暗くなっていた。

引用文献
[1] 梅本洋一, 大里俊晴, 木下長宏編著「パリ・フランスを知るための44章」、明石書店、2012年、18-19頁。

「パリ・フランスを知るための44章」はパリの文化について44のテーマで解説している書籍である。歴史と文化の街パリ、パリの暮らし、芸術と文化の首都、日本とフランス、僕たちのフランス体験の5つのパートで構成されている。それぞれの執筆者ごとに個性のある文章が特徴で、それが読んでいて面白い。今回は「第1章 変貌しつづける都市:パリへの誘い」から着想を得てこの記事を書いた。

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