パリのバス:あたらしい表情をみせるいつものパリを眺めて

昔からバスは好きだった。オランダで小学校時代を過ごした時期も通学はバスだった。バスに乗ると景色が映像として入ってくるのがいい。好奇心旺盛だったためよく車窓に張り付いて外を眺めていた。季節によっていつもの風景は異なる表情を見せてくれる。窓から見えるその景気は今でも思い出として浮かんでくる。

パリのバス

僕がパリに留学したのは2016年9月から2017年2月まで。つまり秋と冬の季節だ。バスから見る秋の景色は良い。天気の良い昼過ぎには、澄んだ空の下に歴史ある建物、紅葉した木々、公園、道ゆく人々など思い描いていたパリの風景が楽しめる。かと思えば、夕方頃にはうっすらと暗くなり始め、すっとした冷気なかにライトアップされたパリの街並みが輝き始める。

この頃パリのバスにはすでにPASS NAVIGOというSuicaのような磁気カード式バスが導入されていて、運賃の支払いは簡単だった。僕は学生だったので、通学定期用のNAVIGOを利用し、パリ市内のバスやメトロ、RERの全線を月額料金のみで乗ることができた(もちろん切符での支払いも可能)。

メトロが使いやすかったので留学してすぐの頃はバスにはあまり乗らなかった。だが少しずつパリの暮らしに慣れてきてバスを使い始めるようになった。メトロは地下鉄のことで外の様子はみえない(エッフェ塔の近くのメトロは地上に出る路線もあって、その眺めの良さには驚いたが)。

バスに乗るとパリの風景を楽しみながら移動ができるので一石二鳥なのだ。ただバスに乗るには注意が必要なこともある。日本のバスだと、録音されたアナウンスが次の停留所を知らせてくれるが、ほとんどのパリのバスはアナウンスがないので、事前に正確な停留所名と通過地点を知っておく必要がある1)。

バスを楽しむコツ

だがそんなバスを楽しむコツがある。時間のある時に目的地を決めずに適当なバスに乗って、好きな場所で降りる。その土地を散策したらまた他のバスに乗って…なんてことをして楽しむのだ。

どこに行き着いたとしてもそこは小さなパリ市内のどこか。帰ろうと思えばGoogleMapの経路検索ですぐに帰り道のバスを検索できる。見知らぬ土地でどのバスに乗ればいいか、案内してくれるGoogleMapは偉大だ。こういうことを繰り返していると少しずつ土地勘がついてくる。

ある日見た景色

ある日、大学でルーヴル美術館を見学するという授業があった。授業は午後からスタートでお昼を食べて各自集合という指示がでた。最短経路がバスだったので試しに乗ってみた。

バスはサンジェルマン・デ・プレの大通りを抜け、小道に入った、かと思えば、セーヌ河を渡り、あっという間にルーヴル美術館に到着した。

束の間の時間だったが、そのときの景色は今でも忘れられない。カラッとした空気と青空のなかに広がるパリの街並み、新しい表情をしたいつも通りのパリがそこにあったのだ。それ以降この路線が僕のお気に入りの系統となった。

小さな好奇心

パリのバスは複雑だが、PASS NAVIGOやGoogleMapなどの技術の恩恵で、以前よりかは利用しやすくなっている。

見知らぬ土地なのでちょっとの勇気が必要だ。だが観光でパリを訪れたらぜひバスに乗ってほしい。きっと小さな好奇心があなたの旅を彩ってくれるはず。そう、パリでは小さな好奇心がさまざま発見へと導いてくれるのだ。

引用文献
[1] 梅本洋一, 大里俊晴, 木下長宏編著「パリ・フランスを知るための44章」、明石書店, 2012年、64頁。

「パリ・フランスを知るための44章」はパリの文化について44のテーマで解説している書籍である。歴史と文化の街パリ、パリの暮らし、芸術と文化の首都、日本とフランス、僕たちのフランス体験の5つのパートで構成されている。それぞれの執筆者ごとに個性のある文章が特徴で、それが読んでいて面白い。今回は「第12章 バス:パリで最高の交通手段」から着想を得てこの記事を書いた。

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