フランスの産業の特徴と先端技術産業における政策:「カギを握る技術」と「競争力の核」

この記事では、フランスの先端産業ついて取り上げ、その特徴や具体的な例について書いていく。その際フランス政府が推進する政策について触れていく。

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  • フランスの先端産業・産業技術政策
  • カギを握る技術
  • 競争力の核(pôle de compétitive)

「現代フランス社会を知るための62章」はフランス社会について62のテーマを詳しく解説している書籍である。社会、教育・文化・スポーツ、経済・産業、法・法律、政治と外交の5つの主題に分かれおり、幅広い事象について理解を深めることができる。この記事は主に本書「第33章 先端産業」を参考に書いている。より詳しい内容について知りたい方はこちらを参照されたい。

はじめに

フランスが現代産業の先進国と聞いて意外に思う人は多いのではないだろうか。しかしフランスは歴史的に見ても技術革新の発明が進んでいた国であることは疑いようのない事実である。例えば、数学、物理、化学そして医学といった自然科学分野においてフランスは過去から現在かけて先進的な地位を維持し続けている。フランスのノーベル賞受賞者数は物理学14人、化学9人、医学・生理学13人(2022年まで)と多い。

フランスの産業技術

フランスの高等教育・研究省の下に置かれる公施設法人「国立学術研究センター」(Centre national de la recherche scientifique:CNRS)を中心とする研究体制は自然科学のみならず人文科学の分野においても、地方分権とともに研究開発が推進され、全国規模で整備が進んでいる。

ここで産業分野における技術の具体的な例をいくつか挙げていく。フランスの観測衛星「スポット」から送られる写真は日本でも種々の分野で利用されている。航空機についてもヨーロッパのエアバスがアメリカのボーイングと対等の競争を繰り広げている。TGVの名で知られる高速鉄道は鉄道の世界最高時速を保持している。ICカードはフランス人技術者ロラン・モノレにより発明された1)。また、自動車のルノーや原子力のアレバなど工業分野においても有名な大企業も多く活躍している。

カギを握る技術

これとは別にフランスの経済財政産業省は1995年から5年ごとに「カギを握る技術」と題して公表している。先端産業の将来予想について、2010年までの5年間を対象に83の技術をリストアップした。その主要項目は「情報通信技術」「素材・化学」「建設」「環境・エネルギー」「生命技術・健康・農産物食料品」「輸送」「流通・消費」そして「生産技術・方法」の8つである2)。この中でも情報通信技術、エネルギー、環境、生命技術、運輸は将来的に潜在需要の大きい5分野として重視された。

これらは必ずしも現在で世界の最先端にある分野ではないが、技術面から見た重要性および市場のニーズ、現在フランスがもつ技術力を総合的に考慮した結果として作成された点で参考となる資料である。

競争力の核

また2002年にフランス政府は研究開発、技術革新分野における政策を見直し、「競争力の核(pôle de compétitive)」と呼ぶ先端産業の集積地を地方に作った。これは先端産業の振興と国土整備を同時に進めようとする狙いがある。フランスでは国際競争力の強化が目指され、これまでの地方分権政策や中小企業支援策に代わり、この「競争力の核」が打ち出された。これは、企業、教育機関、そして研究ユニットが同領域上に特定の目標を持って集まるもので、イノベーションを支援するための政策であるとされている。

2005年には66の「競争力の核」が指定され、2005年からの4年間に公的援助の対象となった研究開発計画は全部で554、援助総額は11億ユーロ、そのうち7億2900ユーロが政府資金によって賄われた3)。

おわりに

フランスの産業分野における数々の取り組みをみると、フランスの産業が遅れているというイメージは全くの先入観であることに気が付くであろう。フランスでは確かに文化政策が重点的に進められているが、だからといって先端産業分野においても手抜かりはない。むしろ両者を並行して進める体制を取るのがフランス政策の特徴ともいえる。

引用文献

[1] 三浦信孝, 西山教行編「現代フランス社会を知るための62章」、明石書店、2010年、193頁。
[2] 同上、194-195頁。
[3] 同上195頁。

参考文献

[1] 岡部遊志, フランスにおける「競争力の極」政策, E-journal GEO, 2014, 9(2), p135

フランスの先端産業への取り組みを知るための文献・情報ガイド

「現代フランス社会を知るための62章」はフランス社会について62のテーマを詳しく解説している書籍である。社会、教育・文化・スポーツ、経済・産業、法・法律、政治と外交の5つの主題に分かれおり、幅広い事象について理解を深めることができる。この記事もこちらを参考に書いている。より詳しい内容について知りたい方はこちらを参照されたい。

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