フランス地方都市のシャッター街問題の原因と課題-地域創生はうまく機能するのか?-

近年、フランス地方都市の社会問題としてドーナツ化現象とシャッター街問題が挙げられます。

今回は、フランスのこの市中空洞化現象とその根幹をなす原因について考えていきたいと思います。

また、これと比較し、日本のシャッター街問題にも触れていきたいと思います。

フランス地方都市の市中空洞化

フランスのシャッター街現象に関しては、その増加について現地在住の日本人も感じているようです。下記の記事では、ディジョンにおける市中のシャッター街の様子がレポートされています。


フランスにはシャッター通りがない?


このシャッター街現象の原因が、いわゆるドーナツ化現象です。ドーナツ化現象とは、中心市街地の人口が減少し、郊外の人口が増加する人口移動のことです。主に産業移転や若者の都市部流入が原因とされています。

フランスの地方都市(人口10万から80万くらいの都市)は、中心に旧市街地があり、外へ外へと広がって発展している構造となっています。例えば、中心に教会があり、その周辺に商店街や市場、居住地域といった具合です。

しかし、近年この市中の商店街が次々に閉店に追いやられていると聞きます。空き店舗割合は、2001年の6.1%に対し、2015年は10.4%とおよそ1割が空き店舗ということになります。

なぜこのようなことが起こってしまったのでしょう?

その理由は、郊外の大型ショッピングセンターの登場とネットショッピング の普及があります。

まず、現地の買い物事情を知るために、次のようにイメージしてみましょう。

平日は仕事で日曜は商店街が定休日、こうなれば買い物に行ける日は土曜日しかありません。そうなれば、1日でまとめて買い物ができる大型のショピングモールに人は集まります。また、いつでもどこでも買い物ができるネットショッピング が普及するのも自然な流れです。

大型ショッピングセンターの利点として、駐車場が広く車のアクセスも良好、雨の日でも快適で、大きな荷物も運べます。これに対して市中の商店街では車両の乗り入れを禁止している区域もあると言います。また、郊外はコスト安で税金や家賃が破格に安く、固定資産税も安いので運営側にとっては非常に有利な条件です。住まいを郊外に選ぶ居住者も増えているのだとか。

続いて、近年のフランスにおけるEC(インターネットコマース)市場の動向をみてみます。

2016年に政府が「デジタル共和国法」を公布したことで、地下鉄などの公共Wi-Fiの整備が進みました。2017年、フランスのBtoC-EC市場の売上高は前年比14.3%増の817億ユーロ(約10兆6710億円)です。ちなみに日本のEC市場売上高が約16兆円であることを考えるとこれは大きな市場規模と言えます。

フランスのグローバルeコマースランクは世界第6位で電子商取引・通信販売事業者協会(FEVAD)が発表した「2017年のフランスにおけるEC市場」によるとオンライン利用者は3,700万人で一人一回あたりの平均支出額は65.5ユーロ(約8,515円)と高い水準にあります。

また、欧州会議でECサイト上のEU加盟店に対する「ジオ・ブロッキング」(ユーザーとサービス提供者間の地理的要因によってオンラインサービスへのアクセスが拒否されてしまうこと)を禁止するEU規則改正案が採決されたことにより、越境ECのさらなる成長が期待されます。

この状況を踏まえた上で、市中空洞化問題を振り返ってみれば、100対1で大型ショッピングモールとネットショップに軍杯があがることは想像しやすいと思います。空洞化の結果、コストが高くて不便な中心部の居住者が減少。それに伴い、学校や郵便局、医療施設、映画館などの施設が閉鎖へ追い込まれているそうです。

この状況を危惧した自治体は次のような対策を講じます。

  1. 税金の軽減
  2. 助成金の設定
  3. 駐車場の無料化
  4. 大型ショッピングモールの新設禁止

しかし、これらの対策はさほど効果がないようです。

ここで、素朴な疑問が浮かびます。

それは、「そもそも旧市街地の商店街の活性化は必要なのか?」ということです。

つまり、躍起になって中心部を復興しようとしていますが、地方創生が仮にうまくいったとしてそれを維持することができるのか?ということです。

ここまで郊外が活性化した理由は、中心部の不便さに対し、郊外の利便性が劇的に向上したからです。このような大きな転換が起こってしまった後で、中心部をそれ以上に盛り上げられる勝算が全く見えないのです。

大型のショッピングモールやネットショップに対抗する形ではなく、なにか別の方向でこの地域を活用する方法はないのでしょうか。

日本のシャッター街問題から学ぶ

そこで、以前からシャッター街問題が深刻化している日本の状況を調べてみることにしました。

日本でも空き家・空き店舗の増加問題が取り上げられていますが、日本の場合は問題の本質が異なっているようです。

国土交通省はシャッター街対策として空き家をデータベースに登録する「空き家バンク」を設置しました。しかし、この対策も根本的な解決策になっていません。実は、問題の根幹は「所有者が全然困っていない」というところにあるそうです。

シャッター商店街のオーナーは、もとから商売をしていて、高度成長期に土地を安価で購入し、同時にマンション投資などで財を成した人たちです。過去の蓄財と不動産収入などで一生生活に困らない程度の収入はあるのだとか。

政府が空き家対策の補助金を設置しましたが、これも逆効果になっていて、実際には適当な家賃設定をして、営業の努力もせずに放置していても、不動産オーナーの懐に税金が入るだけという悪循環も形成されているとか。

今後、人口減少・世帯減少が続けば空き家は増加。EC市場拡大により商業店舗の需要も減少することが予想できます。

オーナーもシャッター街を復興するというモチベーションがないような状況では、地方創生もかなり難しくなります。

ここで求められるのは、問題の表面だけを見るのではなく「空洞化」の実態を捉えることではないでしょうか?

つまり「空き店舗が増えている」という目の前の問題ではなく、その先にあるオーナー達の心境を理解し、政策を進めていく必要があると思います。

例えば、補助金を出すのではなくシャター街撤去のサポートやその先の事業へ投資するための助成金を提供したり、反対に固定資産税を増額することでシャッター街をそのままにすることが損になるような「マイナス政策」が必要だと思います。

そこで得られた税金を使って再開発の費用に充てることも有効です。つまり政策によってシャッター街撤去が促され、それが恒常的に維持されるエコシステムを構築しなければ課題解決にはならないということです。

実際に、北九州の小倉や大阪の丸順不動産など、空き店舗への入居者営業への投資によりエリア再生にまで繋げた例も生まれ始めています。また、佐賀県多久市ではシャッター街の商店や壁を色鮮やかな絵画で彩るウォールアートとして活用するプロジェクトを開始し、「インスタ映えの名所」として好評を博しています。

フランスにも日本にも言えることは、対策が対策になっていないことです。問題の表面だけを見て、場当たり的に対応し、「やっているつもりになっている」だけ。シャーター街問題に限らず、物事の本質を捉えることが、具体的な解決策を講じるための条件になるはずです。

まずは原点に立ち返り、発想を転換していくことが必要なのではないでしょうか?


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参照文献:閲覧日(2020年5月25日)

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