欧州連合(EU)の全加盟国が導入しているサマータイム制度の廃止案が決定の方向で進んでいます。
当記事ではその理由と背景について説明します。
\こんなあなたに読んでほしい /
- サマータイム廃止について知りたい
- そもそもなぜサマータイムを導入しているの?
- サマータイムのデメッリトとは?
サマータイムとは?

サマータイム、いわゆる「夏時間」は、一年のうちで夏と言われる期間(3月末〜10月)に、標準時間を1時間進める制度です。
反対に、「冬時間」(11月〜3月)の間は、1時間遅らせ元の標準時間に戻します。
なぜこのような制度を導入しているかというと、日照時間に関係しています。
フランスでは、夏至の時期における日照時間は5:00〜22:00頃です。
ディナーを終えた後もまだ明るいという状況です。
それに対し、冬至の時期の日照時間は8:30~16:00頃とかなり短めです。これを導入している目的は下記の通りです。
・明るい時間を有効に使うことでの照明の節約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 「夏時間」
・交通事故や犯罪発生率の低下
・活動時間が増えることによる経済の活性化
・午後の日照時間が増えることによる余暇の充実
サマータイム導入の経緯

サマータイム制度は、ドイツ、イギリス、アイルランド、フランスが1916年に初めて導入しました。
45年にフランスは一度打ち切りましたが、石油危機により省エネへの関心が高まった75年に再び導入しました。
98年にヨーロッパが統合されてからはEUの全加盟国がサマータイムを実施しています。
サマータイム廃止案の是非

EUが2018年夏に行ったパブリックコメント(意見公募)では、EU市民460万人が回答し84%が廃止を希望しました。
また、過半数を割った国はキプロス47%、ギリシャ44%の2カ国だけであったそうです。
ですが、正式な廃止決定は早くとも2021年以降になる予定です。
というのも、今回の意見公募の後、まずEU委員会が欧州議会に廃止法案を提案するとともに、加盟国に提案します。
EU議会が法案を承認し、かつ加盟国の55%以上、EU市民の65%以上が廃止に賛成しなければ法案は可決されません。
実質、廃止はほぼ確定といった状況ですが、標準時間を夏時間とするのか、冬時間とするのか、という問題について議論する必要もあるのです。
なぜこれほどまでにサマータイム制度は不人気なのでしょうか…?
それは多方面で様々な弊害が生じているからです。
サマータイム制度による弊害

いったいどのような弊害が生じているのでしょうか?
それは次の3点が挙げられます。
- 時間変化の適応による健康面への影響
- 各種システムの移行にかかるコスト
- 省エネ効果が薄い
ここでは3つのデメリットについてご説明します。
時間変化の適応による健康面への影響

多くの専門家が指摘することには、急に時間をずらすことによる睡眠不足の影響が挙げられています。
時計の時間を早めることにより、心臓発作のリスクの上昇、睡眠効率の低下によるうつ病リスクの上昇、また時間の切り替え時に一時的に交通事故が増加するという報告もあるそうです。
各種システムの移行にかかるコスト

カレンダー・時計機能を利用している全システムを移行するには、多大な労働時間とコストをかけなければいけません。
年2回もこの作業を行うことを考えると、労働コストがかかり過ぎるという意見が多く挙げられていることは想像しやすいと思います。
省エネ効果が薄い

フランスがサマータイム制度を再導入した理由は、明るい時間の有効活用により照明コストが抑えられることでした。
しかし、環境・エネルギー管理庁 (ADEME)の発表では、時間の切り替えにより節約された電力は年間440ギガワットで、これは年間消費量のわずか0.1%にすぎないということだそうです。
まとめ

サマータイム制度は期待していたほどのメリットがあるとは言いがたく、デメリットの方が大きいという意見が多いそうです。
日本では、2020年の東京オリンピックに備えサマータイムの導入が検討されています。
何のために導入するのか、誰にどのようなメリットがあるのかをよく考えて慎重に検討する必要があると思います。
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